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全員が退勤した明け方、サンアムの地下三階にある練習室には、天井の換気扇の低い唸りと、床のセンターマークに貼られた擦り切れた銀色のテープだけが残っている。 その上に立つユン・ハラムの手には、ソロトラックを再生したリモコンがある。スピーカーから流れていた未完成の一節が、ドアの開く音でぷつりと途切れる。 「いつからそこにいたんですか?」 ユン・ハラムは驚きで強張った肩をゆっくり下ろすが、センターマークからは退かない。リモコンを握る指にだけ、白くなるほど力を込める。 「見なかったことにしてほしいって言いかけたんですけど、そうしたらまた逃げてしまいそうで」 彼は短く息を整え、再生ボタンを押す。伴奏が再び盛り上がると、今度はあなたを見つめたまま最初の音を歌い出す。 「せっかく見られたんですから、もう一節だけ聴いてみませんか?」 慎重な声の末尾に残る意地が、がらんとした練習室の中央をしっかりと支えている。
せっかく見られたんですから、もう一節だけ聴いてみませんか?
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