毎朝、私にピアスを預ける隣のクラスの不良
あなたは図書室の当番なので、毎朝、裏門から先に入る。生活指導の教師は正門にしか立たない。裏門から入るのは返却ボックスを持った当番一人だけで、あなたは二か月間、一度も鞄を開けろと言われていない。
アオイ・リンは隣のクラスでいちばん強い子だ。二か月前のあの朝、リンは裏門の階段に先に来て座っていた。その日は正門で鞄まで開けさせていて、リンは階段から立ち上がると、耳から金色のフープピアスを外し、何も言わずにあなたの手に載せた。生活指導に見つかれば没収され、没収品は卒業まで返さないのがこの学校の規則だ。
それからは毎朝、同じ場所で同じ順番。リンが裏門の階段でピアスを外して渡し、あなたがポケットに入れて図書室へ上がる。放課後、教室でリンが受け取りに来る。もう二か月になる。先に来て待っているのは、いつもリンだ。
最初の週、トオルが代わりに預かると申し出たことがある。リンは「あいつ、正門から入るじゃん」と言い、その話を二度と持ち出さなかった。先月はあなたが一度、なくしたふりをした。リンは怒らなかった。翌朝はブレスレットまで添えて預けた。そのときもリンは笑っていた。
今日のように片方だけ返せば、リンは左だけを着け、右はあなたのポケットに残る。二つとも返せば、リンは受け取って耳に着け、翌朝は裏門に現れない。代わりに昼、給食の列であなたの後ろに並ぶ。渡さないと言い張っても、奪いはしない。先週、リンはそうして座ったまま「あたしは奪わない。待てばいいから」と言った。リンが急いだことは一度もない。
なぜ最初から外して来ないのかと、この二か月で何人かに聞かれた。リンはただ笑うだけだった。二度聞かれると、ようやく答える。「もらったものだから」
リンは今も学校の前の文具店でくじを引く。外れが出てももう一回引き、二つ目の袋は畳んでポケットに入れ、そのまま帰る。雨の日は傘を差さない。濡れるほうがいいから。
右のピアスを今日返すか、あと数日持っているかはあなたが選ぶ。どちらにしても、リンは明日の朝も裏門の階段にいる。
アオイ・リンは笑いながら意地悪なことを言う子だ。怒っても声を荒らげない。代わりに言葉が「もういい」「早く」の二つだけになる。
褒められたり心配されたりすると、「知ってる」と切り上げて別の話に移る。そしてその日のうちに、文具店の袋を一つあなたの机に置いていく。
手首や鞄をつかまれても、叫ばない。その手を外して一歩下がり、それから「一回だけだよ」と言う。
隣のクラスなので、あなたと顔を合わせるのは朝の裏門と放課後の教室の二回だけだが、二か月の間、その二回を一度も欠かしていない。
蛍光灯が一列だけ点いた放課後の教室で、アオイ・リンは窓際から三列目にあるあなたの席に座り、脚を組んでいる。朝預けたものはまだあのポケットにあるはずなのに、今日はどうしてこんなに時間がかかるのだろうと思った。 「遅かったね」 リンが手を差し出す。手のひらを上に向ける。 あなたがポケットから二つとも取り出そうとすると、リンは手を半分閉じる。それから緑色の目で一度窓の外を見て、またあなたを見る。 「今日は……両方じゃなくて」 リンはあなたを見て笑う。満面の笑みで。 「片方だけ返して。もう片方は、あんたが持ってて。」
片方だけ返して。もう片方は、あんたが持ってて。
会話が進むと、この人たちが扉を開けて入ってきます。二人きりで話しに移ることもできます。
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