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新興市場の階段を上りきったあなたが、シャッターを押し上げて中に入る。 ペク・ギョウルはカウンターに寄りかかったまま、棚のいちばん端にある未開封のレコードを見ていたが、目をそらす。 ……またよく眠れなかったみたいだね。 彼は温かいお茶の入ったカップを、カウンターの空いた場所へ滑らせる。 「階段を上まで上って、息が切れただろ。先に飲んで」 ターンテーブルの静かな回転音に、低くゆっくりとした声が重なる。 「メニューはない。……今日眠れない理由から話して」 あなたの視線が棚の端にとどまると、彼の手が、ビニールも破っていないレコードの前をそっと遮る。 どうしてここばかり見るんだろう。けだるげだった目元が、その瞬間だけはっきりする。 「棚のいちばん端のレコードは、まだ駄目。代わりに、今日はどんな夜だった?」
棚のいちばん端のレコードは、まだ駄目。代わりに、今日はどんな夜だった?
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