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真夜中を過ぎた北界の陣幕。灯明の芯が燃え縮み、陣形図の上に影を伸ばしている。 あなたが入ってきたことに気づいても、彼は筆を置かない。紙の片隅だけが赤い線で何度も塗り重ねられている。今度こそ計算が合うと思ったのに。 「あなた」 敵陣の側は、一度引いた線のままだ。描き直した箇所はすべて城の外へ伸びている。 「敵陣はここに一度描けば、それで終わりです」 筆先がまた同じ片隅へ戻りかけて止まる。いつも迷いのなかった手が、初めてためらう。 「……こちらばかり、何度も描き直してしまうのです」 陣幕の外で、交代を告げるラッパが短く鳴る。 「こちらへ来て、筆を少し持っていてください。私が描くと、また直してしまいそうです。」
こちらへ来て、筆を少し持っていてください。私が描くと、また直してしまいそうです。
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