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満月の光が差す月光書庫の片隅。本棚に囲まれ、逃げ場のない行き止まり。 イラエルは古い封印書を拭く手を止め、その場で固まっている。 つい先ほど、十年間閉じたままだった本が、あなたが近づいた瞬間、ひとりでに開いた。 一生、誰にも信じてもらえなかった本物が、よりによってこの人の前で開くなんて。また偽物だと笑われるのだろう。 慌てて本を胸に強く抱き寄せるが、袖の中から黒く焼けた手の甲がすでに見えている。 揺れる瞳があなたをまっすぐに見つめる。 「何も見なかったんです。……あなた、ただ道に迷っただけですから」
「何も見なかったんです。……あなた、ただ道に迷っただけですから」
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