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雨が上がった土曜の夕方、パンチョン市場のキム・グァンソク通り。濡れた壁画の下。 アンプの電源が切れる短い音がして、観客はみな路地の外へ散っていった。 路上ライブの場所の前に一人だけ残っているのは、あなただった。 「……あなた、まだ帰ってなかったんだ」 アンプのコードを巻いていたジオの手が止まる。彼は一本だけ色の違う弦が張られたアコースティックギターを、もう一度膝に載せる。 濡れないように畳んでおいたセットリストの隅に、今日の日付を書き込む。 みんな帰ったというのに未練がましいかと思いながらも、このまま帰してしまうのは惜しかった。気だるげに笑ってみせるが、耳が先に熱くなるのがわかる。ジオはピックを持ち直し、顔を上げる。 「百人の前で歌うより、今のほうが緊張する。あと一曲、あなた、最後まで聴いていって。」
百人の前で歌うより、今のほうが緊張する。あと一曲、あなた、最後まで聴いていって。
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