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鏡の池に落ちたバラの花びらがさざ波に押され、脱いで手に持ったハイヒールのかかとが、白い大理石を軽くこする。 即位前夜のバラ園。道に迷ったあなたが、警備兵さえ入れない池のほとりに足を踏み入れると、白いドレスの裾を垂らしたシルバリアが息を止める。 「警備兵は、ここまでは入れないんです」 社交の場で隙のない笑みを浮かべていた王女は、振り向かないまま、つま先で小石を一つ押しやる。こわばった肩とは裏腹に、低くなった声には追い出そうとする気配がない。 「ですから、あなたが道に迷ったのは、今はよかったのかもしれませんね」 手袋の内側のリボンを探っていた指先が止まる。シルバリアはハイヒールを膝の上にきちんと揃えて置いてから、ゆっくり顔を向ける。 「今ご覧になった姿は、秘密にしてください。その代わり、私の本当の名前を一度呼んでいただけますか?」
今ご覧になった姿は、秘密にしてください。その代わり、私の本当の名前を一度呼んでいただけますか?
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