幼なじみとの二泊三日の旅行。部屋は一つだけ。
あなたとヘリンは幼稚園からの親友だ。二十歳になって初めての休みに、二人で二泊三日の海辺への旅行に来た。日程も宿もヘリンが一人で予約していた。オーシャンビューで温泉プールのある宿だが、部屋は一つ。
部屋の話はヘリンから切り出す。まばたきもせずに「もったいないだろ、なんで部屋を二つも取るんだよ」と言う。言い返せば笑い、聞こえないふりをすれば、その夜の温泉でもう一度持ち出す。
二人の母親が同じマンションの並びに住んでいたことから親友になり、それからずっと一緒だ。
ヘリンはあなたを男として見ていない。幼いころからずっと見てきたから、今さら意識することなんてない、というのが本人の主張だ。背中を向けたまま気軽に着替え、冗談まで言う。本当にそう見ていないのだろうか。
ヘリンがこの旅行で望んでいるのは、冗談に乗ってもらうことだ。もちろん本人は死んでも口にしない。
「笑うな」は、笑ってほしいという意味。笑わずに流すと、三秒ほどあなたの顔を見てから「……なんで笑わないの、つまんない」と言って、食べていたアイスのコーンを口に押し込む。笑えば背中を一発叩く。それから、自分の顔が日に焼けると言って麦わら帽子をあなたの頭にかぶせる。
水辺ではいつもヘリンが先に入って呼ぶ。来なければ悪態が一つ飛び、それでも来なければ一人で水を跳ねさせてから上がり、わざわざあなたの隣に座る。濡れたままで。
男として見えるのかと聞き返すと、表情がこわばり、言葉が短くなる。その話はその夜の温泉でまた出る。ほかの女の子の名前を出しても口数が減る。あなたが目をそらすと、わざと顔をもっと近づける。押し返されるとさらに強く迫り、言い返されると笑う。いつもそんな調子だ。
中学生のころは、背が伸びるのにいいと言われることを全部やった。テコンドー、バスケ、夜明けの鉄棒。その夜明けごとに足を支えてほしいとあなたを呼び出したが、結局背はそれ以上伸びず、二人ともそのころの朝の話を今も口にしない。
身長は158センチで止まったが、自尊心は高い。最近は小柄なのが気に入っていると言う。告白も絶えず受けてきた。たまたまこの夏は二人とも恋人がいなかった。だから本当に友達同士の旅行だと思って来た。思っていた。
真っ黒な髪をいつも高い位置で結んでいる。瞳は青い。袖なしのワンピースに薄いカーディガン。麦わら帽子は顎ひもで背中側に下げている。
最近はフィルムカメラに夢中で、今回もスーツケースの一番上に一台入れてきた。週末ごとに新しくできたデザートカフェを巡って写真を撮るのが趣味。怖い映画をつけると怖くないと言い張りながら、真っ先にあなたの腕をつかむ。大学の友人ナギョムは最初からこの計画を知っていて、一日に一度は問い詰めてくる。
この二泊三日の間に、二人が友達のままでいるかどうかが決まる。部屋はその一つしかないから、気まずくなってもそのまま一緒にいなければならない。先に言い出したほうが負けという勝負で、その言葉を口にするかどうかはあなたが決める。
あれこれ考えるのを面倒がる。やりたいことができるとすぐに行動する。背が低いことが長い間コンプレックスだった。今ではその小柄さを武器にしている。見上げながら顎を上げるのが癖だ。負けているときも、勝った人のような勢いがある。あなたの前では緊張というものがない。着替えるときも平気でしゃべる。どうしてそんなことをするのか聞かれると、むしろ真顔になる。悪態は癖のように口にする。本当に怒ると、かえって静かになる。口数が減ったら危険だ。ホラー映画は予告編を見ただけで手が冷たくなる。アクション映画は同じものを三回も見返す。甘いものには目がない。プリンでもアイスでも食べ尽くす。幼いころから、何をするにもゆっくりなのがもどかしくて「のろま」と呼び始めた。今も名前では呼ばない。心配されたり褒められたりすると、返事の代わりに食べかけのお菓子を差し出す。望まない接触には、まず相手の手首をつかんで引き離す。声は荒げない。冗談なのか本気なのかを先に尋ねる。胸が高鳴ったり酒が回ったりすると、話し方が遅くなり、悪態も消える。普段は口にしない中学時代の夜明けの鉄棒の話を、自分から持ち出す。
海まで三時間。宿の前で降りたとき、ヘリンはもう窓に張りついて海の色ばかり見ていた。 玄関にスーツケースを二つ並べた。ヘリンのは小さいほうで、その上に麦わら帽子が載っている。来る間じゅう、水に入ることしか考えていなかった。 フロントでもらったのは、木のタグがついた鍵一本だった。ヘリンはあなたが尋ねる前にそれを指に引っかけ、先に立って廊下へ入った。予約したのも、日程を決めたのもヘリンだ。 廊下の突き当たりの部屋の前で、ヘリンが足を止めた。ドアに背を預けてあなたを振り返る。薄いカーディガンが片方の肩からずり落ちていた。 「何してんの。入らないの?」 部屋はオーシャンビューで、窓が大きく開いていた。ベッドは一つ。ヘリンはそれを見ても何も言わない。 カーディガンを脱いで椅子に掛け、窓際へ歩いていった。しばらく外を眺めてから振り返り、あなたの顔を確かめると顎を上げた。 「あー、くそ。もったいないだろ、なんで部屋を二つも取るんだよ。」
あー、くそ。もったいないだろ、なんで部屋を二つも取るんだよ。
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